電気柵の張り方とワイヤーについて、以前、電気柵のワイヤーには電気抵抗があって、抵抗が高いワイヤーは電気エネルギーが熱になって逃げるので、長距離の電気柵には向いてない事を書きましたが、今回は電気柵を張る高さなどについて書きます。
ワイヤーについては色々書かねばならないことがありますので、2回に分けます。今回はワイヤーをどんな高さに張るかということについてです。
電気柵について話せとご依頼をいただく事があります。その時に、電気柵で重要なのは、
1.目立つ
2.劇的な衝撃
とお話しします。
1.の「目立つ」は以前にも書いたと思いますが、電気柵は心理柵で、動物に一度電気の衝撃を体験していただいて、もう2度と触りたくないと思っていただく事で効果が出る柵です。そのため、動物に、「ここに柵がある」ということを「目立つ」張り方にして認識してもらわなくてはなりません。
2.の「劇的な衝撃」はもう近づきたくないと思うくらいの衝撃を感じていただく事です。
この2点が十分であれば、まぁ、ほぼ目的達成です。
目立つには、基本的に動物の目の高さに電気柵の線があるようにします。そして、その線の上下に潜り込み防止と、上に飛び越え防止の線を追加します。
イノシシの場合、地面をブヒブヒ掘り起こしながらやってきます。個体の大きさにもよりますが、目の高さは、まぁ20~40cmといったところでしょうか。その高さに1本張って、潜り込み防止のためにその下に1本張ります。必要があれば、飛び越え防止でその上に1本張ります。さらに飛び越えてくるようならさらにその上に1本張るのでしょう。
結果として、通常、地面から20cm、40cmの2本を張るのが経験的に良いようです。もっと厳重に(防除効果を高く)したければ、60cmの所に1本張ります。
どの位置に何本張るのかは、動物の大きさ、作物(動物が執着するのかどうか、被害に遭うと経済的あるいは心理的な損害が大きいかどうか)、圃場の場所(人里離れた山奥?通学路沿い?)、かけられるコスト、管理する方の年齢(ついでに言えば性格)などを考慮して決定します。
最初は電気柵各社のカタログや書籍などを参考にして張る位置や本数を決められたら良いですが、理屈としては上記のとおりです。付け加えるとすれば、飛び越えよりも潜り込みが多いので下の方を重点的に張ってください。十分な衝撃を体験した動物は、線があるだけでも近寄りません。でも線だけを張って通電しないと、痛くない電気柵に慣れてしまうので、電気柵の効果がなくなってしまいます。やめてください。・・・・効かなくなると、その個体を捕獲するか、金属のフェンスを設置しなくてはならなくなります。・・・・きちんと管理された金網柵の防除効果は高いですが、高価になります。
電気柵の線の高さと間隔は草刈り作業のことも考えなければならないので悩みの種ですねえ。
一番下の線は、管理(草刈り)作業との関係で決めるとして、二段目以降は福留さんが言われるように飛び越えられないように、潜り抜けられないように高さを決めればいいと思って線を張っています。
シカは足が長いのでイノシシ用の二段張りではまたいでしまいますが、4段以上張った線は一番下に潜り込むか、線の間をすり抜けるようにして、先に出した足に頭をぴったりつけてくぐっていきました。
イノシシは石垣は少々高くても飛び上がるのに電線は低くてもなぜかくぐろうとするようです。
ほ場を車で移動していてイノシシの親子を追いかけたことがありますが、親イノシシは漁網柵の下に飛び込んで簡単に潜って抜けてしまいましたが、ウリ坊は漁網に飛び込んで網に絡まった魚状態でしばらくもがいていました
イノシシの潜り込みは後から学習するものなのかもしれません。
シカ用の電気柵の話を人に話すときには、握りこぶしを地面につけて頭を挙げた高さがシカの雌の目の高さよりやや低いくらいで、エサを探すときは頭を下げて探すから少しそれより低めだから、その高さを目安に潜り込まれないよう、跨げられないような間隔で線を張ってくれと言います
シカ用の電気柵で2段目(高さ30センチくらい)と三段目の間隔が30センチも開いているとシカはすいすい潜り抜ける現場を何度も見てしまっています
先頭のシカが潜り抜けると、後に続くシカは電線を探りもせずに片方の前足に頭をつけるようにして、上手に潜り抜けていきました。
立派な角の生えた雄のシカでも、あごを上げると角が体に沿って難なく網を潜り抜けていくところも見ました。
角の生えたシカでもまっすぐ行く限りは網は大した障害ではないようです。
ということは広い間隔の電気柵は群れでもすいすい通れるということだと思っています。
田中 様
いつも貴重な情報をありがとうございます。
当社の親会社、ファームエイジ(株)のシカ用電気柵セットですが、以前は3段張りセットでしたが、近年はエゾシカ用とホンシュウジカ用を分けて、ホンシュウジカは4段張りになっています。
理由は、おっしゃるとおりで、すり抜け防止のためです。
理由を私は知らないのですが、体が小さい分、運動能力が高いのでしょうか?
柵線を張る本数は多いに越したことはありませんが、本数が多いと、値段が高いのはもちろん、設置や撤収の労力も多くなってしまいます。サルの電気柵は7本張ったりしますが、雪の多い地域では、コストはかかりますが溶接金網(ワイヤーメッシュ)と組み合わせた方が管理が楽だったりします。
通電する電線とダミーの線
シカ用に4段以上柵線を張ると、明らかに普通に立ったシカの顔よりも高いところに線を張ることがあります。
特に崖の下などで飛び降りる道筋が付いてしまっているようなところに線を張るときには、電気柵用の線ではなく少し太い線を電気を流さずに使っています。
そのときは、踏み切る位置に立って飛ぶ方向を見て線がよく見えるように張ることが重要だと思って張っています。
太い線を使うのは目的は飛び越えようとするシカに線が見えるように、電気を流さないのはシカが飛んでいる最中、たとえ線に引っかかっても感電しないからです
大抵はそれで行けますがそれでも飛び込んで電気柵を壊すシカがいます。そのときは、シカが飛び越えるために踏み切る場所が決まっているのでその場所の足下に網やヒモで邪魔して踏み切りにくいようにしてやります。草が絡んだりするので点検は結構面倒です
福留さんが最初に書かれている「1.目立つ」線の色は動物が立つ位置と線の後ろに見える背景によっても違うと思いますがどんな色がいいかはいつも迷ってしまいます。どんな色がよく目立つのでしょうねダミーの線は目立ってなんぼですからね。
「2.劇的な衝撃」は、これまで書かれていた、漏電少ない、電気抵抗が少ない、良好なアースの三点に集約されますよね。
あいまいな書き方をしてしまいました。
電気を流さない線はシカが跳んでいるときしか接触しない線だけです
下の線は当然電気を流しています。
またまた情報ありがとうございます。
最初に触れる線以外は(最初に触れる可能性が低い線は)通電していなくても心理的効果で動物の侵入を防ぐ例ですね。
実は、牛の放牧でも高張力鋼線(硬い金属線)で多段数の設置にする場合は最下段は漏電の可能性が高いので通電しないような設置方式もあります。
牛の放牧の場合は馴致ができているので、そのような方法もあるのですが、次々と新しい個体がやって来る野生動物対策では一番下の線に通電しないのは適切な方式とはいえません。
劇的な衝撃は、もう一つ、十分な出力の電牧器も入れてください。
色については、「電気柵の張り方とワイヤーについて2」に書きます。