バッテリーは不死身なのか?

今年の梅雨入りは例年よりも、とても早くて梅雨が明けて夏真っ盛りかと思ったら、また梅雨に逆戻りしたような天候が続き、電気柵のバッテリーにとってはなかなか酷な夏となりました。

悪天候が続くと、「電気柵が通電しない」というお電話を頂きます。大抵がバッテリー切れです。

バッテリーは十分に充電されていますか?と尋ねると、「バッテリーが消耗しているかと思って充電器につなぐと、すぐにフル充電になるので、充電は十分なはずだ。」というお答えが返ってくることがあります。

 

ここで一言「バッテリーは不死身ではありません」

 

バッテリーは使用しているうちに極板がだんだん劣化していき、本来有るはずの容量が徐々に少なくなっていきます。具体的に言うと、新しいうちはフル充電しておけば2週間通電できた物が、フル充電しても1週間しか保たなくなるということです。

そんなの当然だろ。と言われそうなのですが、バッテリーの容量の低下は、徐々に起こるのではなく、経験的に突然やってきます。

皆さんも経験があると思いますが、寒い朝に車のバッテリーが弱っていて、エンジンの始動に失敗するようになると、充電をしてもバッテリーの状態はあまり回復せず、やはりその後もエンジンの始動に失敗するようになると思います。充電しながらだましだまし使っても、おそらく数日のうちにバッテリーを交換することになると思います。

今年の梅雨は大丈夫だったとしても、この度の長雨ではダメになったりします。結構突然やって来るので、電牧器が壊れたのではないかと思われる方も多いです。

 

最初に挙げた事例の、「すぐにフル充電になる」というのは特徴的な症状で、バッテリーが劣化して、容量が極端に少なくなっているので(観念的な表現ですみません。「極板表面が劣化して内部抵抗が高くなった状態」というべきなのでしょうが)、「すぐにフル充電」になってしまいます。このような場合、電牧器につなぐと、あっという間に放電してしまって、電牧器が数回しか電撃を出さなかったりするので、フル充電のバッテリーをつないでも出力しない → 電牧器が壊れている、と錯覚してしまいます。

 

バッテリーの劣化具合は、バッテリーの内部抵抗を測定することで知ることができます。

計測する道具がございますので、お持ち頂けば計測いたします。また、その道具(当社ではバッテリーチェッカーと言っています)を販売もしています。以前は随分お高い機械で、手が出なかったのですが、中国製の安価な物が出てきて、電気柵のバッテリーのチェック程度であれば、十分に使えます(というか結構正確だと思います)。

 

ここから余談ですが、普通は電気柵の電源はソーラーパネルでバッテリーに充電して使用することが多いのですが、消耗したバッテリーでもソーラーパネルで充電できると思っておられる方が多いです。

 

ソーラーパネルとバッテリーの間に充電コントローラーというのがあると思います。充電コントローラーは簡単に言えば、「ソーラーパネルを電源にしたバッテリー充電器」です。充電コントローラーは、あくまでも正常なバッテリーを充電することを前提としていますので、過放電したバッテリーや、内部抵抗が高くなって劣化してしまったバッテリーには充電しません。

自動車で使えなくなったバッテリーでも電気柵ではそこそこ使えますが、ある日突然(曇天が続いた後などに)充電されなくなりますので、ご注意ください。

 

よく、電気柵のバッテリーは何年くらいで寿命になるのか? と聞かれます。「まぁ5年くらいですかね」と答えますが、使用環境によってバラバラで、ちなみに、うちの近所の電気柵は10年以上バッテリー交換せずに何事もなかったかのように動作しています(バッテリー液の補充は数回しています)。

以下の条件の時に劣化が早くなります。

低電圧状態が長く続いた場合にバッテリーの劣化が特に進みます。例えば、バッテリーに対して高出力の電牧器を使用して常にバッテリー電圧が低くなっている場合や、冬期間稼働を停止するとき、充電せずにバッテリー電圧が低いまま数ヶ月保管してしまった場合。電源ONのまま越冬させると特に密閉式バッテリーの場合、新品でも翌春には使えなくなってしまいます。常に充電された状態をキープすれば長持ちします。

ご注意ください。

 

もう一つ余談ですが、アルカリ乾電池について。

アルカリ乾電池は、構造上、スッカラカンになると内部でガスが発生し、「必ず液漏れします!!」

当社の電牧器は一番小出力の物だけ乾電池で使用できるようになっていますが、電源ONのまま圃場に放っておいて、翌春使おうと思うと、アルカリ乾電池が液漏れして中がサビだらけになります。電池ケースを良く洗って、電極をサンドペーパーなどで磨けばまた使えますが、電牧器の基板がダメージを受けたり、スイッチがさび付いたりして、電牧器があまり長持ちしません。・・・私どもにとっては、とても良いお客様なのかもしれません。

もう一度「アルカリ乾電池は、放置すると必ず液漏れします!!」

 

余談が多くなると読むのが面倒になりますね。すみません。

たまに、電牧器のことを「バッテリー」とおっしゃる方があります。電牧器は英語では「Energizer;エナジャイザー」といいます。以前、「バッテリーを送れ」と言われてバッテリー(蓄電池)を送ったら、お客様が欲しかったのは電牧器でした。

 

長文、最後前お付き合い頂きありがとうございます。

4件のコメント

バッテリーの話を聞こうと思ったところへちょうどいいタイミングでの投稿。
ありがとうございます。

バッテリーのみで(ソーラーパネル無し)で使用していると、バッテリーの消耗をいつも気にして、夕方、通電ランプを確認する習慣が付いていたのですが、ソーラーパネル付きのセットの方でバッテリーが切れたまま使用されている電牧機を時々見かけます。

理想的には商用電源から電源が取れるといいのですが、取れないときは乾電池か蓄電池を使わなければならず、またバッテリーもカーバッテリーでいいのか、それなりに高いやつを買った方がいいのかいつも迷っています。ソーラーパネルももう少しお値段が下がると手を出しやすいのですけどねえ。
おすすめのバッテリーチェッカーを買うべきなのかなあ

毎度です。

ソーラー無しでバッテリーだけで運用する方法は、電牧器の消費電力に対してバッテリーが十分大きければ、良い方法だと思います。

例えば、当社で最も出力が小さい電牧器の「AN90S」は12Vで運用した場合、消費電流は13mA(ミリアンペア)です(取扱説明書より)。これを軽自動車用のバッテリーで運用した場合、バッテリーの容量が30A(=30,000mA)だとすると、30,000÷13=2,308時間通電できることになります。(ここでは、バッテリーの放電特性や気温など細かいことは抜きにして、おおよそこの程度だということを理解していただけたらと思います)

2,308時間は約96日に相当するので、単純に考えると新しいバッテリーなら充電無しで3ヶ月くらい運用できることになります。本文でも書きましたが、バッテリーは放電状態で放置すると早く劣化するので、例えば2週間くらいで充電しながら運用するとか、同じバッテリーを2個購入して、1週間交代で片方のバッテリーはフルオート充電器に(トリクル充電対応の充電器)つなぎっぱなしにしておくとかすればバッテリーも長持ちします。

人間というのはおかしなもので、毎日とか毎週のルーチンワークは比較的忘れづらく、苦になりませんが、年1回とか、シーズンに1回とかの単発の作業は忘れたり先延ばしにしてしまいがちです。例えば、水田はほぼ毎日水管理されると思いますが、毎週月曜日は充電したバッテリーを持っていくというふうに、ルーチンワークに取り入れることができれば、おそらくバッテリー切れは起こりにくくなると思います。

ただ、残念ながら、当社の電牧器は出力が大きい分、消費電流も大きいので、最大出力1ジュールの電牧器くらいまではこの方法で運用できると思いますが、それ以上の電牧器は消費電力が大きく、交換するバッテリーも重くなりますので、車が近くまで行けない場合はちょっと大変になります。この場合はソーラーパネルを使った運用方法にして、ルーチンワークとしてバッテリー電圧を定期的にチェックする方法が現実的だと思います。

ソーラーパネルを使用する場合に注意しなくてはならないのは、バッテリー電圧をチェックしても、日中はソーラーパネルで充電されているため、本来のバッテリー電圧が測定できません。正しいバッテリー電圧を測定するには、日没後十分に暗くなってから測定することになります。劣化したバッテリーの場合は夜半過ぎに放電状態になってしまい、翌日日が昇ってからソーラーパネルで充電されますが、バッテリーの容量が小さくなっているので、あっという間にフル充電状態になり、正常なバッテリーと見分けが付きません。

ソーラーパネルでの運用でバッテリーの劣化状態を電圧だけでみようとすると、正確には日の出前の暗いうちに電圧を測定しないと本当のことは分かりません。正常だと思っていても、実は夜半過ぎから日の出までは停止している電気柵もしばしば見られます。

現実的な方法として、ソーラーパネルで運用している場合にバッテリーの劣化具合をみるには、ソーラーパネルの接続を外して1日運用し、テスターで電圧を計測すれば、おおよそのバッテリーの劣化なり放電具合は分かると思います。

手軽にバッテリーの劣化具合を知りたい場合は、バッテリーの内部抵抗を測定できるバッテリーチェッカーは便利です。

ちなみに、当社では安価なオリジナル品のソーラーパネルやバッテリーの販売もしています(安価だからといって粗悪品ではありません自信を持って販売しています)。見た目はちょっと不細工ですが、温度補償機能付きの充電コントローラーなど使用していて、とても堅牢で実用的です。

わが家では、電牧機のバッテリーを新品で買わずに中古品を使用しているのでどうしても寿命が短くなるし、ものによって寿命が長いものや短いものがあるのでバッテリーをいつ交換するかが結構課題になるのです。
あまりケチらずに新品を買えばいいだけとも言えるのですが、農機具のバッテリーは結構容量が大きいのでもったいないと思ってしまいます。
中古なうえに保管中に自己放電してしまっているからますます持たなくなっているなあと思いながら使っています。
つないですぐは電牧機のバッテリーランプもばっちり点くのですが、ニ三日でヘタってしまうというのも時々経験します。
そこでこいつはダメと印をつけたやつをオヤジがしるしを外してまた充電するという悪循環(笑)
うーむ。どうすればいいか

電牧器のバッテリーはセルモーターを回すわけではないので、中古のバッテリーを使われるのは良い方法だと思います。ただ、ソーラーパネルを接続していると、昼間は普通に動作していても、夜中に電牧器が止まっていても気が付かないことが結構あります。マメに電気柵の通電状況をチェックできる方にはおすすめの方法です。電気柵は消費電力がそんなに大きくないので、電気柵すら正常に運用できなくなったバッテリーは残念ながら廃棄処分ということになります。

電気柵のバッテリーは、セルモーターを回す(大きな電流を必要とする)わけでもなく、振動があるわけでもないので、比較的安価な自動車用バッテリーでも結構大丈夫です。経験から、サイクルバッテリーと言われる、高価ですが過放電に強いバッテリーとそんなにバッテリーの寿命が違うという印象はありません。ただ、出力に応じた容量だけは確保してください。当社(ファーム鳥取)の基準としては、おおむね2週間程度稼働できる容量を目安にしています。

中古のバッテリーは、見た目と重量は新品と変わりませんが、容量が減っていますので、そのつもりで使っていただけば問題ありません。しかし、十分に充電すればまた復活してしっかり使えるかも知れないという希望を何となく持ってしまいます。その気持ちはよく分かります。ですが、これも経験ですが、サルフェーションを除去するとか、復活すると謳っている機器を用いても、多少は良くなるような気はしますが、残念ながら復活しません。

> そこでこいつはダメと印をつけたやつをオヤジがしるしを外してまた充電するという悪循環(笑)
> うーむ。どうすればいいか

・・・実は我が家でもよく見る風景です。こればかりはどうしようもないです。

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